フランスでの海外柔道研修と卒論調査です。もともと大学(鹿屋体育大学)は教員志望で進学し、教員免許取得と柔道を専門に行っていました。漠然とですが、海外志向はありました。在学中に約2週間ほど海外に行くチャンスがあり、柔道研修として大学の恩師である濱田初幸先生と2人でフランスへ渡りました。研修では柔道クラブで濱田先生が行う技術指導のアシスタントや、ジュニアナショナルチームでの稽古、卒業論文作成のための指導者資格制度の調査およびフランス人柔道家へのアンケート調査を行いました。日本とフランスの柔道を比較することから日本柔道の普及・発展のための課題を考察しました。
このフランスでの経験が私にとって一番大きかったですね。それが今につながっています。研修の話が出たときは、フランス語が話せない、英語も話せない状態でしたが、それでも私は海外へ行きたいと強く思いました。なのでアルバイトで必死にお金を貯めてこのチャンスを逃さないように頑張りました。フランスへ行った際、観光で訪れた港があり、そこは講道館柔道の創始者である嘉納治五郎師範が柔道普及のために初めて訪れたヨーロッパの地・マルセイユでした。そして今自分がいる港が、当時師範が日本から到着した場所だったと知り感動しました。
また、フランスのホームステイ先では、フランス語はしゃべれませんでしたが、家族の方から非常に親切にしていただき仲良くなれました。時間を頂き講習会を開いてつたない英語で柔道の指導を行いましたが、思うように伝えられませんでした。ところが最後に“ありがとう”と言ってもらえたんです。選手としてまったく実績のないこんな自分でも人に喜んでもらえた。このことが自分の中で大きな爆発が起こり、「海外×柔道」にとても興味を持つようになりました。
その後も、国内で鹿屋体育大学国際スポーツアカデミー(NIFISA)といって、2020年東京五輪に向けた国際貢献事業SFT(スポーツ・フォー・トゥモロー)における国際スポーツ人材育成拠点の構築というプログラムに参加し、アジア諸国のさまざまなスポーツ分野の指導者や研究者を対象とした柔道体験のセミナーで柔道指導を行いました。そこでもつたない英語とジェスチャーでしかコミュニケーションができませんでしたが、言葉や文化などの壁を越え、柔道をツールとした国際交流から人と人とのつながりが生まれることを実感しました。
大学4年生になって教員採用試験のための勉強中でも“また海外へ行きたい”という想いが強くなっていました。そこで大学の先生に相談したところ、JICAのことを教えていただきました。そしてJICAについて調べたところ、青年海外協力隊に柔道隊員というものがあることがわかりました。ちょうど調べた日の翌日に鹿児島県内でJICA海外協力隊の説明会が行われることを知り、すぐに申し込み参加しました。そして説明会で話を聞いて、即断で青年海外協力隊への参加を決意しました。